警察博物館へ

 先月の9日(ってブログを始めた日だよ)、京橋のフィルムセンターに行った折り、時間が空いたので、すぐ近くにある警察博物館(無料)に入ってみました。
 ここは警視庁の歴史や活動に関する資料を展示している施設で、それほど大きな建物ではないのですが、一階から四階までのスペースの中に、白バイ・赤バイ(昔の)・黒バイ(要人用)、警察ヘリ第一号の現物、制服、エンブレム(警察章)、装備品、鑑識道具、執務文書、音楽隊の楽譜、西南戦争資料、などなどが陳列されています。固定された乗物には試乗もでき、また子供用の制服というのが用意されていて、着替えて写真撮影もできたりします。すごく小さな売店には、ここでしか入手できないピーポくんグッズというのも置いてありました。
 驚いたのは、三階にある殉職した警察官を顕彰するコーナーです。凶悪事件等で命を落とした警官たち(男)の遺影と遺品がぎっしりと並べられており、一種荘厳な空気を発しています。なんでこんな生々しいものが陳列されているのかとも思うのですが(ちょっと離れた所には、二・二六事件で殉職した巡査の、刀剣の痕の残る制服なんてのもありました)、これは展示などではなく、まさに顕彰であり、偉功を称える記念碑なのです。ここでは過酷な現実に対して襟を正すことが半ば求められます。こちらの遊山的な態度を戒められているようでもあり、どちらが見られているのかわからなくなります。さすがは警察の博物館。貴重な体験でした。
 何年も前ですが、板橋美術館に行った時、男子トイレに小便器のアートが一つだけ設置されているの遭遇しました。デュシャンを引用して、日常と美術の乖離や美術館という枠組の解体を目論んだのでしょうが、確か「これは作品なのであまり汚さないでください」などと表記してあり、なんて志が低いのだろうと思った覚えがあります(そう書くなら全ての便器に書いたらいい)。とは言え、来場者にこうした事柄を考えさせること自体、意味のある試みだったのかもしれません。警察博物館も期せずして、見物人のサディズム的な視点を撹乱させてくれるのです。
 途中で警察学校の生活を紹介する10分ほどの映像が流れていました。これもなかなか面白かったです。このVTRでは、一人の女子生徒が中心に据えられています。あまりに短い内容なので、わざわざ個人を紹介する必要はないような気もするのですが、これは一種の清涼剤なんですね。画面でも「卒業後に男は地域課、女は交通課に配属される」などとあっさり説明されているように、警察でもはっきりと、女性性は優しさの表象として使われます。とは言え、この女子生徒は本当に終始愛くるしい表情をしていて、やはり魅惑されてしまいます。そればかりか、背景の群集としてしか登場しない男子生徒たちの表情も素敵でした。この女子生徒の可愛らしさと違って、男子生徒はみんな三白眼なんですよ。と言って、それが凛々しくて、実に格好いい。どちらもすごく魅力的。この初々しさには騙されます。
 いずれにしても、警察(官)と言えば、なかなか縁遠い存在だったのですが、その現実に多少なりとも触れ、ちょっぴり身近に感じられました。