2018.12.19水

 〇上野の都立美術館のムンク展に行こうとしたが、直前にホームページの開催情報をチェックしてみると、今日はシルバーデーと称して高齢者は無料になるということがわかり、大混雑になることは必至なので、取り止めることにする。既にチケットは入手しているのだが、いつも混雑しているようで、なかなか行き難くて迷ってしまう。
 僕はそもそも上野の美術館・博物館で開催される展覧会が苦手だ。確かに素晴らしい展示が目白押しなのだが、あまりに集客力が高過ぎて、じっくり鑑賞できたという気がしない。僕は最初から行く気はなかったが、東博鳥獣戯画展をやった時もとんでもない混みようだったらしい。僕はその数年前に行われた六本木のサントリー美術館の修復前の展示に二回行ったが、こちらは吃驚するほど空いていて(二回目は多少は入っていたが)、絵巻物の流れをじっくりと堪能できた。みんな上野に集まり過ぎなのだ。出品する方も鑑賞する方も、国立だの都立だの特別展だのの名前に惑わされていると思う。もちろん、重文級の文物や信仰の対象を借り出すには相当の権威や名目が要るのだろうし、そうでなければお目にも掛かれないわけで、末端の鑑賞者としてはありがたいと感謝するしかないのだが(阿修羅像や無着像の後姿もこういう機会でしか見られない)、この混みようは何だかおかしいレベルだと感じる。
 その一方で、常設展示の空き具合と言ったら。いろんな名品が惜しげもなく展示されているにも拘わらず、特別展とは打って変わって、こちらはいつもガラガラ。もう少し混んでも罰は当たらないと思うのに。

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 〇国立アーカイブにてスウェーデン映画を二本。ヴェイレル・ヒルデブランド「ペンション「楽園」」(1937)とマイ・セッテリング「ガールズ」(1968)。どちらもとても面白かった。三十年代にこんなに洗練されたコメディが作られていたとは、流石に北欧(スウェーデン)は映画大国で、その懐は深いと感心した。さらに驚かされたのは後者で、五十年前にこんなに非の打ち所のないフェミニズム映画が存在していたとは衝撃だった。両者とも同時代にはかなり批判され、特にセッテリングはこれでキャリアを棒に振ってしまったとのことだが、単に今から賛美するだけではなく、そういう状況の方をもっと詳しく知りたい所だ。そして、それがこうして現在、きれいな状態で観られるというのもすごいことだと思う。映画はともあれ、大切にされてきたのだろう。